はじめに
数日前、JapanNewsNaviとそのラベルを付与された複数アカウントがTwitter(X)で一斉凍結されました。これに先んじて山本一郎氏がnoteに『参政党を支えたのはロシア製ボットによる反政府プロパガンダ』という記事を投稿されています。また、これを受けてWeb第三文明が政府要人のコメントなども含めたまとめ記事を公開しています。
これによって、ある意味「他人事」だった情報戦の脅威が日本国内でも認知されるようになったと言っていいのですが、現状、私が見る限りでは主にTwitter論壇において「政府要人や政治学者らの発表を鵜呑みにする人」と「陰謀論的な見方をする人」に二分しているように思われます。
個人的に、「このようなできごとは国家の存亡にかかわる側面もあり、政府が簡単に情報を開示するはずがない(手の内を晒すことは相手に対策を促すことであり、当然、機密情報になっているはず)」と思うのですが、そうした考えの人がほとんど見られないことが不思議で、ChatGPTに論旨を整理してもらい、記事にまとめることにしました。
なお、Twitterは現状、過剰な警戒モードにあるらしく挙動不審で、noteもその影響を受けているらしいことから、あえてこのブログに投稿します。
※記事の性質上、典拠の内容には踏み込まないので、詳細を知りたい方はお手数をお掛けしますがリンク先の記事を参照してください。
山本氏のnote記事と平デジタル大臣の記者会見の関係
山本一郎氏は2025/7/15付のnote記事で、「ロシア製ボットが参政党等を支援し、日本国内で“認知戦”が激化している」とする見解を示されている。ただ、私自身がnoteユーザーなのでよくわかるのだが、noteはブログの延長のようなプラットフォームで、学術誌における査読のような機能がない(編集者による校閲もない)ため、誰もが自由に見解を発信できる。山本氏のnoteは詳細な分析が行われているが、既存メディアの記事として公開されているものではないため、同じ「個人の見解」ではあっても信頼性には一定の留保をする必要があると私は考える。
その一方、同日に平将明デジタル大臣が記者会見を開いており、「外国勢力による介入の報告があり、検証が必要」と述べられている。
僕は普段から極力「政治的な話題」からは距離を置いている(無関心なわけではないが、有象無象の過激な発言者が多いため、下手に触れると厄介事に巻き込まれる危険がある)ため、全体の論調がどのようになっているのかは知らないが、どうも山本氏の記事が投稿されたタイミングでデジタル大臣の記者会見があったことから、両者を結び付けて考えている人がいるらしく、それに懐疑的な人もいる(例えば與那覇潤氏)。
與那覇氏の意見はもっともだと思うものの、今回の事案を個別事例として見ると與那覇氏には賛同しづらく、モヤモヤが残ったのでChatGPTに仮説という名の推測を投げかけ検証してもらったのがこの記事を執筆するきっかけである。
まず、日本経済新聞が次のような記事を出している。会員限定記事で全文が読めないが、2025/7/2付で、ロシアによる情報工作の疑いを掲げ注意喚起を促している(無料会員だと月一本限定で有料記事が読めるので、一通り目を通してみたが、全体に「疑い」の域を出ないものの、鳥海不二夫先生の分析を基にしており信頼はしていいと思う)。
ここから推測できるのは、「①以前からそれなりにロシアの情報工作は取り沙汰されていた」「②山本一郎氏のnoteがバズったので、政府がそれに便乗した可能性が高い」である。ChatGPTは「複数省庁や与党はSNS事業者との連携を行い、プラットフォームの内部ログやAPIデータなどからデータ収集や解析を実施可能です」「政府コメントは、こうした広範な情報収集が背景にある可能性があります」と言っているが、僕も同様の見解である。
ロシアによる情報介入を疑う報道(概観)
昨年12月、ウクライナの隣国であるルーマニアの憲法裁判所は、11月にに行われた同国の大統領選挙の結果を「無効」とする判断を下した。これはNHKが記事にしていて、「12月4日に政府が機密文書を開示し、ロシアによる介入の可能性があり、親ロシア感情などを広めるためにジョルジェスク氏の動画が組織的に拡散されていたと指摘している」と報じられている。
また、2016年のアメリカ大統領選挙では、翌年のアメリカ議会公聴会でロシアの介入が取り沙汰されている。
この記事に重要な指摘がある。ロシアは選挙結果を操作しようとしたのではなく、アメリカ国内の分断を企図していたらしいのである。以下、該当箇所を引用する。
公聴会では、ロシアが選挙結果とは別の成果を出していたことが明らかになった。アメリカの分断を拡大し、社会にさまざまな怒りを沸き起こさせたのだ。誰が勝利したかは別として、大統領選がもたらしたのはアメリカの選挙システムに対する怒りと不信だった。はっきりしているのは、この怒りを生み出したのはロシアだということだ。
普段、名指しで人を批判しない(どうしてもしなければならない場合は不本意な反発を恐れて〈しずかなインターネット〉へ隔離している)が、今回はあえて言わせていただく。先にリンクを貼った與那覇氏の記事を読むと、意図的かどうかはわからないが、ロシアの目的を選挙介入と断定し、歴史上のできごとに基づいてそれに逐一反論される一方、WIREDが指摘する世論の分断が目的であった可能性に言及されていないのだ。あくまでTwitter内部を観察した結果の所感にすぎないが、ロシアの工作が事実だという前提に立つと、僕の見立てでは明らかに選挙介入ではなく世論の分断が目的で、與那覇氏の指摘は的を外しているように思われる。
出典は記されていないが、Web第三文明の記事では、今年、ドイツとポーランドでも情報工作の疑いがある旨の発信があったことが記されている。
ケーススタディ:EUのロシア政府系メディアの排除
こちらの記事によると、ヨーロッパの多くの国でロシアのプロパガンダメディアの発信が禁止されているという。
2022年にEUが「ロシアの国営テレビRTのヨーロッパ各国向け計5チャンネルと国営ラジオ・ニュースサイトSputnikのEU域内での提供を全面禁止する法律を制定した」ことについては、NHK放送文化研究所の記事が最もわかりやすくまとめていると思われるのでリンクを貼っておく。
記事によると、当時、欧州ジャーナリスト連盟などの各団体は「禁止措置はロシアの報復措置を招いて状況を悪化させるおそれがある」「プロパガンダに対抗する最良の方法は,多元的なメディア環境を促進し,独立したジャーナリズムが情報の真偽の検証を行い市民に示すことだ」と反論していたようだが、生成AIの発達などによって情報工作がより巧妙化していることに加え、SNSを通じた情報の即時消費が加速している状態では、ジャーナリズムがいくら情報の真偽の検証を行い市民に示しても、どの程度効果があるかはわからない。悲観的な見方だが、情報統制のそしりを受けても、政府が信頼できる情報に基づいて外国の介入を防ぐ措置を取らざるを得ない状況になっているのではないかと感じる。
実は、これらはまったく無根拠に行われたのではなく、2020年に英国議会情報安全保障委員会(ISC)が「Russia Report」として報告書を提出するなど、一定の信頼できる調査結果の積み上げがあったのである。この「Russia Report」はガーディアン紙が解説記事を書いているので、リンクを貼っておく(英文)。
当時、このニュースは大手新聞社やITmediaなどの二次メディアも報じていたのだが、まだパンデミックの最中であったためか、あまり話題にならなかったように思う。
概ね、多くのケースでロシアによる情報工作の存在は複数の信頼できる筋から一貫して示唆されており、「確証なき信頼性の高い警告」が続いている状況であると言えようか。
そうすると、アメリカや欧州などの先行事例があったにもかかわらず、政府は手をこまねいていたようにも取れ、遅きに失した感はなくもないが、それでも手を打たないよりはマシである。
我々「日本国民」の問題
冒頭で触れたが、現状、私が見る限りでは主にTwitter論壇において「政府要人や政治学者らの発表を鵜呑みにする人」と「陰謀論的な見方をする人」に二分しているように思われる。これについてChatGPTに分析してもらった結果をもとに続きを書いていくが、AIが言うことなので鵜呑みにはできないものの、(あくまで私の体感であるが)おおよそ妥当な見方ではないかと思う。
まず、国家レベルの情報工作やサイバー諜報に関する情報は、以下の理由で詳細な発表が控えられるのが通例であるという。
- 機密保護(敵対勢力に分析材料を与えることを阻止)
- 作戦の継続性(情報工作を監視・逆利用している場合、相手に気づかせない)
- 世論の過剰反応防止(中途半端な公開は”陰謀論”や“政治的な武器”として使われやすい)
アメリカNSAは「サイバー攻撃を検知しても明言しないことが多い」が、攻撃が国家レベルに達すると「外交上の警告」として発表することもあるという。
私はこれが当たり前だと思っていたのだが、今の日本のTwitter論壇を見ていると、どうやら当たり前ではないらしい。ChatGPTによると、次のように整理できるという。
まず、日本では、こうした「非開示原則」や「インテリジェンス活動の前提理解」が、一般にはまだ広く共有されていない傾向があるといい、これは私の体感とも一致する。
その背景として考えられるのが、
- インテリジェンス教育の不足(情報戦に関する基本的リテラシーが高校〜大学教育にほとんど存在しない)
- 報道文化の性格(日本の報道機関は「情報源の提示」や「説明責任」を強調する傾向があり、「なぜ根拠を出さないのか」という不信につながりやすい)
- 疑似対称性の論理(全ての意見を対等に扱う報道が、かえって真偽の判断を困難にしている)
2については「他者に情報源の提示や説明責任を求める割に、自分たちは必要以上に情報源の秘匿・説明責任の回避をする」傾向があるように思う。また、3については主に科学的正確性を欠くことになる(科学と疑似科学が並立してしまう)として識者から問題視されている部分でもある。
それはさておき、こうした日本の特殊性が、政府発表や政治家の言及に対して「信じすぎるな」と警戒する人々と、「国家が守っていることを信じろ」という二項対立を生みやすいと言っていいだろう。この背景には、戦後の「戦前型権力構造へのアレルギー」が「中立・公正」を過剰に信仰しがちな文化的傾向を生み出したことがあると言え、それが言論の自由の過剰な擁護(それが「何を言っても許される」という誤解を生み、デマ拡散や誹謗中傷の横行を暗に支持していることになる)にも繋がっていると考えている。
また、Twitterの特性上、「断定的で情動的な発信」が拡散されやすく、極論が可視化されやすい構造も影響しているようで、中立的な発信はアルゴリズムのいたずらで埋もれやすくなっていると言える。
まとめると、
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日本では、「機密情報は開示されないのが通例である」「開示すれば防衛にならない」という基本的なインテリジェンスの考え方があまり共有されていない。
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その結果、政府要人の発言が「裏付けなき政治的発言」として過小評価されるか、「無批判に受け入れられる」かの両極端になりやすい。
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対応としては、政府側も「根拠は明かせないが、多角的な分析結果によって判断している」といった中間的な説明の技術が求められる。
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同時に、市民側も「情報開示=善」「非開示=悪」という短絡的思考から脱却する教育的支援が必要。
となるだろうか。とにかく、情報を正しく集めること、特に一次情報にあたってみることが肝要である。宣伝になるが、noteにこのような記事を投稿している(うち3本は有料記事)。
おわりに
こうした分野は私の専門外なんですが、最近、とにかく真偽不明の情報に踊らされる人が増えたため、危機感を覚えていたところに、こうした事態が起きたため、より混乱を深めている状態のようで、居ても立ってもいられなくなったわけです。急いで筆を執ったため乱暴な記事になっていると思いますが、リンク先の情報と照らし合わせて「何を言いたいか」汲み取っていただければありがたいです。
今回はこの辺で。